痛み

痛みは主観的で他人には分からない。
つらい痛みに耐えかねて病院へ駆け込み、ただひたすら「痛い」と訴え続けがち。
痛みがうまく伝わらない。
こんな経験を持つ人は多い。
正確に伝わらないと、診断や治療に時間がかかったり、適切に治療がされなかったりする。
うまく先生に伝えるには、どうすればいいのだろうか。

製薬会社大手のファイザーは、慢性痛患者(約五千人)と慢性痛治療の経験がある先生(約170人)を対象に、痛みと治療に関するアンケート調査をインターネットで実施。
患者さんの7割が「痛みをどのように伝えたらいいか分からない」と回答した。
先生は「痛くてつらい気持ちはわかるが、『とにかく痛い』などと痛みの感想を話されるだけでは治療に進めない」と話す。
先生に丸投げではなく、患者さん自身が痛みの内容を細かく伝えることが重要と指摘する。痛みに関する情報が多いほど治療の選択肢が増え、正確に治療方針が決められ、効果も高まるからだ。痛みを上手に伝えるためには、押さえておきたいポイントがある。

いつから起きたか。
何かきっかけはなかったか。
痛む部位や強さ。差し込むようだとか、殴られたよう。などの痛みの性質。
先生が患者さんの痛みの強さを知るために用いる手法として、「ニューメリカルレーティングスケール」がある。
痛みが最も強い時を10として、現在はどの程度なのかを聞くものだ。患者さんは痛みが弱ければ1や2などと答え、強ければ9、10と答える。


数値を大きく言う人や、逆に控えめに言う人もいるが、患者さんは気にしなくて大丈夫。先生は痛みに関する他の情報も加味して、強さを補足するので、実態と大きくずれることは少ない。治療を進めていくなかで、痛みの最高時の程度からどのくらい変化したかで、治療効果を確認する。

「先生に痛みを正確に伝えるのがいかに大事か」。
長年、首と腰の痛みに苦しんできた板橋区在住の梅さん(55)は、からだ工房(同区)での経験を話す。

先生は「梅さん、今抱えている痛みについて、できるだけ具体的に教えてください」と求めた。
梅さんは「下を向いた時に、首の付け根から肩にかけ、キューンとつっぱったように感じる」と伝えた。先生は、梅さんが過去に交通事故の追突事故にあった経験があることを合わせて考え、むち打ち症の後遺症が出ていると判断。それまで梅さんが他の医療機関で受けていた治療とは、別の角度から痛み止めの治療をはじめ、神経にアプローチをするなどの施術を施し、痛みを和らげた。

梅さんは「正しく伝わり、適切な治療を受けられた」と満足げだ。

痛みの性質を把握するのも重要。
鈍い、鋭い、重いなど実際の痛みに近い表現を使う。ピリピリ、ヒリヒリ、ジンジン、ズキズキなどオノマトペ(擬態語)も有効。表現の違いで「原因が筋肉なのか神経なのかなどがわかる」
痛みに関する施術が専門のからだ工房では、先生が状態を細かく聞き出していくなかで、患者さんも自分のことを客観的につかみやすい。
痛みが専門の先生がいない一般の医院などでは、自身の痛みを客観的に説明するのが難しいこともある。「医療機関に行く前に、痛みの情報をメモし、先生に伝える準備をしておくとよい」と勧める。

・時期(いつから)
・場所(何をして)
・痛む部位
・強さ(現状の詳細)
・性質(どう痛いのか)
・日常生活への影響――などを控えておき、問診時に伝えること。
・過去の病歴(健康診断、検査資料があると治療の助けになります。)

先生は、痛みの情報に基づいて、どうして痛くなるかという仕組みを説明。
施術法の種類や内容を話し、どの順番で対処するかなど、ひとつずつ患者さんと相談しながら決めていくことになる。
たまにいらっしゃるのが「右膝が痛い」治療後に
「左膝が痛い」。最初から「左膝が痛い」と主張が変わる方。
痛みで混乱しているのは分かりますが、これでは治療のしようがありません。

一日で全ての痛みを取ることは困難です。落ち着いて一つ一つ解消していきましょう。

当院では患者さんに寄り添いお支えすることをモットーにしております。

先生は「痛みへの着手は患者さんと先生の共同作業。両者の間でよいコミュニケーションがとれることが、痛みを和らげる近道だ」と話す。